はじめに
リリースから瞬く間に大ヒットを記録した個人開発ゲーム『ひとりぼっち惑星』。前編では先日のサービス一時停止を踏まえた技術面での裏側をお伝えいたしましたが、後編では ところにょり 様ご自身から、本作の開発についてと、アプリ開発への想いをインタビューさせていただききました。
それでは、お楽しみください~
- ところにょり 様のプロフィールをお教えください
数ヶ月前に関西の芸術系大学を卒業し、卒業後はフリーランスとして個人でゲームをつくっています。高校生の頃からずっと小説を書いていたので、創作歴は短くないのですが、ゲームを作りはじめてからはまだ一年と少ししか経っていない超がつく初心者です。
-「ひとりぼっち惑星」の概要をお教えください
「ひとほろぼし」「ひとたがやし」と続いて僕のつくったゲームでは三つ目になる作品です。三作品とも世界観を共有しており、「ひとほろぼし」「ひとたがやし」を踏まえて、ひとがいなくなってしまった惑星が作品の舞台になっています。
その惑星に存在するのはお互いを壊し合う「ジンコウチノウ」という機械と、ひとりぼっちのいきものだけです。 そのいきものが機械の部品を拾い集めながら、アンテナを拡張して遠い宇宙から送られてくるこえを集めようとするゲームです。
-今作でこだわったポイントは何ですか?
やはりユーザー同士がこえを送受信できるという点です。
「あれ、もしかして僕でもゲームってつくれるんじゃないか?」と気づいた頃から、ずっとこういった仕組みを持ったゲームをつくりたかったんです。
受け取っても返信できず、送っても返信をそもそも期待できない、完全に一方向的なコミュニケーションしか存在しないゲーム。というのが理想でしたが、今回はちょっと思った通りにはならなかったです(笑)
Twitterと融和しやすい構造を作ったのも僕ですし、初期の頃それを助長したのも僕ですし、僕がなにかを言う資格もないのですが…。
それに、なんだかんだ今の状況はすごく面白いと思うので、むしろ良かったような気もします(笑)
-mBaaSサービスの中で、ニフティクラウド mobile backend を選んでいただいた理由は何でしょうか?
正直に言うと、アイデアを思いついた時はParseを使う予定でした。
ですので、いろいろParseについて調べて、そこそこ使えるようにはなっていたのですが、ご存知の通りある日突然サービスの終了宣言が(笑)
そこでニフティクラウド mobile backend さんを選んだのですが、今となっては大正解だったと思ってます。もしParseを使っていて今回のようなトラブルが起きてしまったら、英語も使えないですしなにをどうすればいいのかも分からないので、復旧に何倍もかかっていたと思います。
mBaaSを使う人は、僕を含めてサーバーに関してはほとんど分からない素人が大半だと思うので、なにかあった時や分からない点があった時に、日本語でやり取りできるニフティクラウド mobile backend さんのようなサービスを使ったほうが、絶対に幸せになれると思います(言わされてないですよ!)。
-独特なメッセージシステムには「データストア」機能を利用いただいているように見えますが、ざっくりと実装の流れをお教えいただけますか?
基本的に、numberとvoiceのふたつのフィールドで全てを行っています。
まず送信時に行う処理は、「新しいレコードを作る>voiceにこえを登録する>numberにクラス内で最も大きいnumberを持った数値 + 1の数値を登録する」という工程です。
受信の時に行うのは「クラス内で最も大きいnumberを取得>その数値を最大値にして乱数を生成>その乱数の数値のnumberを持ったレコードのvoiceを取得」という工程です。
-今後使ってみたい機能は何ですか?または、ニフティクラウド mobile backend に無いけど、やってみたいネット関連の機能はありますか?
とくにこの機能が欲しい、というのはないのですが、今ある機能でもUnityでは使えないものがいくつかあるので、それが使えるようになったら嬉しいなという気持ちはあります。
ただ、やっぱりニフティクラウド mobile backend さんに本当にお願いしたいのはひとつだけです。おわらないで!
-個人ゲームアプリ開発者へ伝えたいことがあれば、ぜひお教えください。
話は飛びますが、この世界にある小説のほとんどは、個人の手によって書かれています。もしそれらが複数人の手によって協力して書かれていたとすれば、これほど多種多様で自由で極稀に前衛的なものも現れる小説というジャンルは育たなかったと思っています。漫画も同様です。
反対に映画やアニメなどの複数人でしか作り得ない(例外もありますが)ものにも、複数人の思惑が入り交じることでしか生まれない面白さがあると思います。
ゲームというのも基本的にずっと後者の立場でやってきたのだろうと思いますが、いまではゲームエンジンなども発達し、個人でゲームをつくることが難しくない時代になってきました。それを僕は「小説を書くようにゲームを作れる時代」だと捉えています。
それは言い換えるなら、個人でしか作り得ない面白さをゲームでも十分に表現できるということです。
個人製作という点に限ると、小説や漫画などに比べてゲームはかなり遅れていると思います。まだまだやれることは溢れるほどありますし、他ジャンルがやってるのにゲームではやってないことも腐るほどあると思います。レッドオーシャンと良く耳にしますが、それは企業の話であって、個人にとっては新開地です。耕せる大地は山のようにあります。
なので個人開発者の皆さんには、どうか個人であることを弱みではなく強みと捉え、個人でしか作り得ない面白さのあるゲームをつくっていって欲しいなと思いますし、僕もそうやってつくっていきたいなと思っています。
また、話は変わりますが、個人開発者に寛容な社会に少しずつ変わっていけばいいなという希望を持っています。そして今回の件で、何度も言葉で殺されるような思いもしましたが、同時に温かい言葉や応援の声をたくさんいただき、その片鱗を見られたような気がしました。
こんなところで言うのもあれなのですが、辛いときに応援していただけた皆様、本当に心から感謝しております。ありがとうございました!
インタビュー後記
最後のところにょりさんの言葉は、強烈に共感しました。100%同意します。私もいつか、個人のゲーム作りが大人の趣味として、「盆栽」「絵画」「模型作り」などのステージに進んでほしいと考え、色々な手を打ってきました。ところにょりさんのアプリはこだわりと個性を出しながらも、大ヒットとなりました。その作者の言葉には強い説得力があります。私も個人ゲーム開発者の一端としては負けてられないっす....
ところにょりさんはParseも検討していたようですが、文中にあるように終息が決まっており、2017年1月でサービスが停止の予定です。ニフティでは、Parseからなるべく手間をかけずにデータや仕組みを移行できるよう、個別にご案内する「乗り換え相談会」を実施しています。
Parse乗り換え相談会
相談会は主に法人を対象としておりますが、近日中に乗換を簡便にするツールの提供も予定しています。こちらは法人個人問わずに無料でご利用頂ける予定ですので、ぜひご活用頂ければと思います!
そんなわけでNIFTY Cloud mobile backendは、ネットワークを使ったまったく新しいアプリのアイディアが気軽に試せるサービスです。今後もゲームアプリの活用アイディアやサンプルを充実させつつ、個人ゲーム開発者の皆さまを応援してまいります!
※※おしらせ※※
もし、「俺もニフティクラウド mobile backend 使ってこんな変わった機能作ったぞい!」という方がいたら、わたしのTwitterにご連絡くださいませ。ぜひぜひ、お話聞きたいと思っています!@Takaaki_Ichijoまでどうぞ。