5月30日にIIJ社にてBaaS(Backend as a Service)勉強会が行われました。HTM5 Japan Cupと合わせてHTML5アプリ/サイトの開発者にBaaSを知ってもらい、その活用による可能性を見いだしてもらうためのイベントです。
そのメインとなったのが記事中で紹介するBaaS各社によるパネルディスカッションです。徐々に認知度が高まってきているBaaSサービスを提供する各社がどのような狙いをもち、そして市場を捉えているかといった鋭い質問が行われていました。
そこでこの記事ではパネルディスカッションの様子をまとめてみました。ぜひご覧ください!
Q1. 海外には数えてみると数十社がサービス提供している状況だが、日本市場は実際のところどうなのか?
株式会社アピアリーズ 荒川様(以下ア社)
現状から言えば儲かっていると言えるところまでは至っていないのが実情。しかしIIJ社と提携するようになって問い合わせが増えてきている。mBaaS自体は技評などのメディアで記事になって盛り上がっていると感じている。
Kii株式会社 石塚様(以下K社)
まだまだだと感じている。しかし隠れて興味を持っている人は多いとも感じている。mBaaSはどうなのかという社名を隠した問い合わせも増えている。儲けはまだまだ。当社としてはいけるという手応えはある。
ニフティ株式会社 野田(以下ニ社)
儲けという意味ではそこまで大きくないという認識。イベントなどに出展し、問い合わせは増えている。リリース(13年秋)から比べると盛り上がっている実感がある。
Q2. 日本で提供されるメリットや違いは?
K社
日本のアプリであれば日本のサーバで提供されるメリットがある。さらにKii Cloudではマルチサーバ(US/中国/シンガポールなど)に対応しているのもメリット。
ニ社
日本語によるサポートが一番大きい。個人であれば英語情報を調べることもできるが企業ではやはり日本語サポートのメリットが大きい。またサーバは国内なのでレイテンシは高い。ドメスティックなレベルでは優位だと思う。
ア社
IIJ社との連携もあり、日本国内であればワンストップでサービス提供できるメリットがある。
Q3. Web/HTML5とmBaaSはありかなしか
K社
どちらかと言えばあり。サーバサイドスクリプトを置き換えるBaaSの存在はまだまだチャレンジできる余地がある(PHPやRuby on Railsを置き換えられる)。
ニ社
現状提供されているSDKではキーを書かないといけないといけないのでセキュリティ的に問題がある(今後対応)。Monaca + NCMB連携が進んでいるのでHTML5×mBaaSの夢が大きく広がっている。
ア社
十分あり。キーを隠蔽できるのでWebアプリとの親和性が高いと思っている。HTML5ではプッシュ通知が使えないのかという問い合わせが多いので今後対応を考え中。
Q4. 実際、BaaSのアーキテクチャはどうなっているのか?
K社
インフラはAWS上に構築(中国は別)。プログラミング言語的にはメインはJava、さらにPythonやnodeなど様々に混ざっている。ストレージはRDB/MongoDB。
ニ社
自社のニフティクラウド上にて構築。プログラミング言語はメインはJava。データベースはMongoDB。
ア社
基盤はIIJのジオクラウド。開発言語はJavaで、場合によってはPHP/JavaScript。データベースはMongoDBがメイン。
Q5. BaaSってサーバエンジニアを駆逐する?どんなことを学んでいくべき?
K社
今後、食われる部分はあるのかなと思っています。ただし不要にはならないと思っている。AWSが出てきた時に似ていて、AWSによってインフラエンジニアが消えたかと言うとそうでもない。シビアなパフォーマンスが求められる部分は今後もサーバエンジニアが求められると思っている。
ニ社
BaaSを選ぶのはアプリのフロントエンドを作っている人だけでない。サーバサイドエンジニアはBaaSを使うことによって生まれた余裕をフロントエンドの知識を蓄えるのに使っても良いのではないか。仕事としてはBaaSの選定など上流になっていくべき。
ア社
サーバサイドエンジニアがいらなくなることはない。配線だのといったことは必要ないが、サーバ構成を考えるべき部分はサーバエンジニアがやるべき。仕事のレイヤーは変わるかもしれないけど必要であり続ける。
Q6. BaaSを使ってモバイルアプリを作る際に向き不向きは何か?
K社
基幹業務でも使いたいというケースも多い。複数アプリを作るとバックエンドを共通化したいというニーズが出るので、その時に向いているのではないか。
ニ社
多彩なニーズに応えられると思う。IaaSが出てきた時と同じで、コントロールできない領域が許容できるかできないが重要。
ア社
元々キャンペーンアプリが多かった。すぐ作る、一定の期間で終わりといった利用に向いていた。ゲームアプリであれば求められるパフォーマンスが高く、自前で持っている場合が多かった。
Q7. 各社の差別化要因は?
K社
マルチサイト、海外展開向きなのが差別化要因ではないか。機能面で差別化はなかなか難しい。使ってもらえないと意味がないので、最初は好みで決まるのではないか(SDKの作りなど)。
ニ社
機能面では差別化は難しい。ニフティではIaaSからプラットフォームまで1社で持っているのがメリット。外部パートナーのスマートフォンアプリ向けサービスと提携するところも強みと考えている。
ア社
BaaSは汎用的な機能を簡単に使えるようにするのが第一なので差別化は難しい。当社では業務アプリ系の話を聞くことが多いのでそこが差別化になるかも。汎用的な部分とともに業種、エンタープライズ系に進む可能性がある。
Q8. オンプレミスについてはどうか?
K社
当社は提供している。エンタープライズ向けニーズがあるので踏み切った。MEAP(モバイル・エンタープライズ・アプリケーション・プラットフォーム)からBaaSは難しいがその逆はやりやすかったのも大きい。
ニ社
エンタープライズからの問い合わせは多い。アーキテクチャ含め良い方法があれば提供したい。
ア社
OEMとして検討中。来月あたりに情報が出せる(かも)。
いかがでしょうか。実際BaaSは目に見える機能面での差別化は難しい面がありますが、だからこそ各社の思いや目指すべき市場によって差異が生まれてきている雰囲気があります。市場自体がまだまだ黎明期であり、まずBaaS自体の認知度向上と利用実績を増やすのが第一と考えられます。
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